三重県多気町
松本畜産
https://www.matsusaka-ushi.com/
松本 一則 さん
しのぶ さん
萌 さん
yunou 第11回目。
今回は三重県多気町にあります、松本畜産にお伺いさせていただきました。
おおらかでとてもハツラツとしたしのぶさんに迎えられ、まずは松本畜産が営む『お肉料理カフェまつもと』へ。
(取材当日はお休みの中ご対応していただきました。ありがとうございます。)
ここ松本畜産は肉屋の娘のしのぶさんと牛屋の息子の一則さんの出会いから始まりました。
昔ながらのやり方で牛を飼育し販売まで手掛ける松本畜産。
一則さんは松本畜産5代目の代表として、通常より長く時間をかけて牛を飼育し、手間暇愛情をかけて牛を育てています。
そうすれば時間もコストもかかりますが、手をかけたらかけた分だけ『正常な価格』で取引すれば良いという考えをお持ちの素晴らしき方でした。
『都会』という名の市場に行けば、’’モノの価値’’が0にも100にもなり得ます。
牛に例えると、通常の2倍3倍の値段になる牛もいれば、逆に安く買い叩かれるのもある。
『何を基準にものの価値計るか』は私たち消費者の思考であると僕は思っていて。
私たちがリテラシーの無いまま好きなことを好き勝手に考え、行動すると、モノの価値は時に意味を無くしたりするかもしれません。
では、例えば、牛肉を食べるとき、どう良し悪しを考えたら良いか。
一則さんは味で判断する。と言います。
ちゃんとした肉はずっと食べれる。
特に脂の質。
食べ比べるとその美味しさがわかるそうな。
僕は松阪牛たくさん食べたことないのでわかりませんが、一度味わってみたい経験だと心底思いました。
ここで松阪牛についての説明を。
松阪牛は江戸時代に兵庫但馬から農耕用の牛としてやってきたことが始まりです。
そして、当時の西洋の肉食文化が入ってきたことでグッと普及しました。
但馬牛は人間に対しては温厚で、牛に対してはキツイらしく、特に雌牛はイジが悪いと一則さんは笑いながら話してくれました。
元々は税金のかからないルートを通ってやってきた牛。
当時は関所を通ると関税を払わないといけなかったので、税を払わないように和歌山経由で三重県までやってきたと言います。
今は地方によって牛文化、豚文化、鶏文化と、いろいろありますが、自分の住んでいる地域の歴史を調べてルーツを辿るとおもしろいかもしれません。
ちなみに群馬県の豚文化は、家の前に豚を吊るし、その数の多さで家の良し悪しがわかったという興味深い情報もいただきました。
こわっ。
松本畜産は一則さんの父の代までは牛の売り買いの家畜商をしていましたが、一則さんの代から自分達で牛の飼育から販売までするようになりましたが、こうしたスタイルで仕事をしているところは本当に少ないと言います。
今こうして牛の飼育から販売までが分業制になっているのは、現代の農家には1頭何十万、何百万もする牛を捌く技術や施設がないからという理由もあって、松本畜産のように農家として牛も飼育をした上で販売までする人たちが少なくなればなるほど、やはり自分達が扱うものに対して思いや考えは浅くなっていくのかなと思いました。
どれだけ可愛がって愛でた牛も出荷されて解体されて販売される。
その道中にどれだけの人の手が加わり、そこにどれだけの思いがあるのか。
牛を屠殺する人にとってはどんなに愛情を込めて育てた牛も牛は牛かもしれません。
もちろん、現代の流通という流れの中にはそれぞれに役割があるから否定するわけではありませんが、昔は地のものを地の人間で食べてたことを思うと、悲しくなりますね。
次は牛肉の等級分けのことを。
牛肉は12等級に分けられ、脂肪の入り具合で各等級に分けられます。
A5とかA4とか聞いたことがありますね。
が、しかしその格付けの基準に、脂肪の質は問われないらしいです!(衝撃的でした)
脂の量を見るらしい。
ということは、単純に考えると、畜産業が儲かる牛肉の作り方をすると、(脂肪の多い牛を育てる)、消費者が迷惑する。ということにもなります
もちろん脂肪の量だけを見て、それを喜んで食べている人は別かもしれませんが。
『大きく育てて、大きく売る』ということに注力するあまり、その先の考えてこなかった日本の畜産に一則さんは警鐘を鳴らしていました。
目先の利益の追求。
先人たちはその先には何が見えていたのだろうか。
つづく。